日本で一番美しい風景は何?とアメリカ人の友人に尋ねたことがある。彼は、「秋の黄金の稲田」と答えた。夏の終わりに稲穂は、かすかな甘い香りを発して開花し、9月に入ると田は金色に波打つ。子供の頃には、家族総出で稲刈りとおだがけをした。今や機械化されて、コンバインで刈り取りそのまま脱穀までしてしまう。地域の人々が開墾し整地した田も、少子高齢化で存続するのがやっとの有様で、山間の田は里山と共に荒れている。自分で食べるものは自分で作るのが人類生活の第一歩。日本人が米を食べて存在する限り、9月の黄金の稲田の美しい風景をなくしてはいけない。それを失った時、日本人もいなくなるのではないか。